私の青空2002

滝沢歌舞伎。ごめん舐めてた。電話、繋がりもしなかった。ショック過ぎて涙も出ない。あんなに公演回数多いんだから余裕だと思ってた。FC枠で「全滅」の声を聞いてやや焦ったけど、それでもまだ大丈夫だと思ってた。ごめん、ほんとに舐めてた。

健ちゃんごめんね観られない。観たかったのに。

で、とりあえず本題。

先日「私の青空2002」の最終巻を借りて、驚いた。

私の青空」は朝ドラで、「~2002」はいわば続編。続編が作られるのは朝ドラ史上初ということですごく話題になった作品だ。今でも多分、他には「ちゅらさん」しかないと思う。

で、何に驚いたかというと、ストーリーは勿論、登場人物の詳細を完璧に覚えていたこと。昔の作品って、「この人出てたんだ!」っていう驚きがあるものだけど、まるでなかった。皆覚えてる。なんならその最終巻に登場しなかったキャラまで思い出せる。

どんだけがっつり見てたんだか。

で、続編というと問題なのは新たな追加キャラ。作品を生かすも殺すも新キャラ次第な訳で、それが菊川怜三宅健姉弟な訳です。

最初は嫌だったなぁ。健ちゃん嫌いだったもん昔。見ていくうちに「悪くないかな」とは思えた記憶。

大体のストーリーはというと、結婚式当日に新郎健人に逃げられたなずな(田畑智子。実は妊娠中)。親の反対を押しきり出産、どうやら東京にいるらしい健人を追って赤ん坊と上京。周囲に助けられつつ未婚のシングルマザーとして奮闘する物語。で、なんやかんやで健人(筒井道隆)と再会。子供の存在を知った健人と話し合い、夫婦でなくても子供の父と母として協力して生きていこうと決める話。←ここまで本編。

で、新キャラ菊川怜はなんと健人の新しい恋人役。マジか。いや健人は一応独身だからいいんだけど、え、いいの?なんやかんや揉めます。健ちゃんはその弟だけど、彼には彼の物語が用意されてます。

とにかくこの作品の健ちゃんは笑わない。前半は特にイライライライラしてる。笑わない健ちゃん…最高。

津軽の林檎農家を姉と二人で切り盛りしてる佐藤猛(←健ちゃん)。林檎農家といえばあの無農薬で有名な木村ナントカさんをモデルにしたっぽい*1農園で、両親ともに既に死亡という設定です。姉弟二人で頑張ってます。嘘。頑張ってるのは姉小雪だけ。猛働かない。サボり倒してる。ボクシングのインハイか何かで良い成績を残すもやめてしまい、かといって真面目に働くでもなく、だらだらイライラ。
「本当はボクシングやりたいんでしょ。農園のことは気にしないでやっていいから」という小雪に「うるせえ!」と突っかかってばかりいる。東京のボクシングジムからスカウトに来た健人にもケンカ腰。

荒れてる健ちゃん良い!

健人がまだそこにいるかと迎えにきた健人の父にまで突っかかる猛。気弱でふにゃふにゃしてやられっぱなしの小雪もついにキレる。死にたい勢いでキレる。そんな中、「まぐろ漁師になれ。向いてる」と思いつきでいっちゃう健人父。「知人の漁師の家で住み込んで働いたら」って。あのね、ノリで生きてる感じの父なのね。当然相手にしない猛。

でも次の登場シーンでは荷物纏めて健人父と並んで立ってる猛。えええのっちゃったぁーあれその場の思いつきだよ絶対!「知人の漁師」さんはその話何も知らないよ!

ここの経緯、ちょっと覚えてなかったんだよね。猛が北山家(田畑智子の実家で、父は伊東四朗)に住み込んで漁師の修行という名目で「根性叩き直され」、やっと自分の気持ちに素直になって東京のボクシングジムへやって来る流れは覚えてたんだけど。

まさかこんな軽ーい切っ掛けだったとは。

で、嫌な予感があたり、全て寝耳に水の事後承諾でひたすら困惑する北山家の面々。歓迎されないことに舌打ちし帰ろうとする猛。しかし来ちゃったものは仕方ない、伊東四朗*2の鶴の一声で猛はそのまま住み込みで修行を始めることに。


猛はボクシングなんか大嫌いだといい、林檎農家も嫌いだという。なのに、ちゃんと家にいるんだ。外をふらふら遊び歩いて家にいつかないとか、そんなんじゃない。冬の津軽は遊び場もなかろうとかそうことじゃなくて。姉が作業に出ている時は自分もちゃんと作業場にいる。部屋でぬくぬく漫画読んだりしてない。きっと、根は真面目な優しい子。でも、そこにいるだけで仕事はしない。毎日をただただ無為に過ごしている。この窒息しそうな閉塞感がなんとも言えないんだ。多分だけど猛には友達もいなさそう。猛にあるものは、マジで姉と農園だけ。

ボクシングは嫌、林檎も嫌、姉はムカつく。だけど他にやりたいこともないし、行きたいところもない。それに自分がいなくなると姉一人じゃ農園経営は大変。だけど、それでも。そんなところに提示された「まぐろ漁師」「一本つれたら百万」。

多分、なんでもよかったんだ猛は。外に連れ出してくれる何かであれば。

そんなこんなで居着いた北山家では伊東四朗にしごかれ、加賀まりこに布団叩きでぶたれ、山崎裕太*3に生意気な口をきかれ。最高に苛つきながらも溢れる程の家族感に圧倒されていく猛。

最終的には東京のボクシングジムに行きプロテストを受ける*4までになるが、姉と健人の関係を知った猛は悲痛な顔をする。なにより健人の子供が二人の関係に胸を痛めていることで姉を責める。子供の頃、親のことでヒソヒソされた嫌な思い出を吐き出し、健人の息子もきっとそうなると姉を責める。小雪も泣きながら、苦しい心情を吐露する。

なんだかんだいって二人きり支えあい生きてきた姉弟なんだな。全部吐き出してぶつかり合えるのは根底に良い関係があったからだと思う。

猛との話し合いが決め手だったのか、結局、小雪は健人との関係を一方的に清算し、同郷の林檎農家と見合いして結婚を決める。

全体を通してみるととにかく小雪が可哀想な展開だったなあ。反抗的な弟と二人きり、息の詰まりそうな日々の中現れた健人。猛がまぐろ漁師の修行話に乗ったのと同じ気持ちで、小雪は健人に救いと潤いを見いだしたのだろう。しかし「独身で、まして子供などいない」と聞いていたのに健人には実は事実婚に近い相手がいて、子供もいる。小雪、完全に不倫女の扱い。健人は健人で、息子が成人するまでは結婚しないとか言い出す。

自分は法的には独身だから恋愛はしていい。でも息子がいるから結婚はあと12年しないって、ってそれ女にとっちゃ酷くない?勿論子供も産めない訳だし。一方的にそう決めて、いかにも俺は誠実ですみたいな顔で、健人ひどい。

最後、一方的にフラれ落ち込む健人と、なんだかスッキリした顔のなずなと息子の姿で物語は終わる。猛のその後は勿論わからないのだけど、まあそれなりに平穏に真面目にボクシングを続けていくのだろう。

佐藤姉弟は全編津軽弁だけど、東北弁特有のはっきりしないモゴモゴした発声が健ちゃんの声とよく合っている。そしてとにかく、やり場のない苛立ちをもて余しているその演技がとても自然で良い。正直36歳の今より大人びて男らしくて、可愛い路線を受け入れる前の健ちゃんはこんな感じだったのかと思う。笑わない健ちゃんは良い。苛々した健ちゃんも良い。今の健ちゃんでそんな役を見てみたい。

…って、滝沢歌舞伎ぃぃぃ観たかったあ!腹筋太鼓とやらで歯を食いしばって汗だくになってる健ちゃん観たかったあ!わあああ!

*1:実際に監修という形でクレジットあり

*2:三宅さんを語る上で外せない伊東四朗とボクシングは共にこの作品から続く縁

*3:それにしてもあんな可愛かった小学生がこんなガラ悪くなっちゃうなんて…

*4:対戦相手役はなんと井岡弘樹