三宅健というひと

私は三宅健を尊敬している。

以前の記事にも書いたけれど、昔は彼が嫌いだった。本人の表現を借りるなら「おまえのポジティブを全部ネガティブにかえてやりたい」という感情である。世間を舐めたあの感じ、どうにか凹ましてやりたかった。今思えば、8つも年下の子供に対してまあ容赦ない感想だ。大人げなかった。


彼のイメージが変わったのは極めてごく最近である。彼のラジオ番組での発言を知ったからだ。


『適当にやってさ、チャランポランにやっててアイツ何の悩みもなく生きてるなみたいなぐらいが丁度良いよね。
芸能人はアイツ多分悩んで生きてないんだろうなみたいな、そういうぐらいが丁度良いよねパブリックイメージで』*1

そう、私が苛々していた「三宅健」の姿は、彼自身が「芸能人としてあるべき姿」と計算していたものだった。私の苛立ちも嫌悪も全て、彼にとっては計算通りの、予定されたものだったのである。まあこれはあくまでも最近の発言であって、デビュー当時は絶対そんなこと考えてなかったと思うが。


そう、三宅健は計算高い。岡田准一と同じく自己プロデュースに熱心で、しかしこの二人の方向性はまるで違う。


例えば、三宅健といえば必ずセットで思い起こされる人物、森田剛。「剛健」と呼ばれ、双子と設定され、ジャニーズ史上最高のシンメとされる相手。
ファンの「剛くん大好きな健ちゃん」という表現について、


健)いや、好きな感じにしといたら、
  ファンの人が喜ぶかなーと思って、
  やってるだけだから、
  別にそんなに言うほど好きではないんだけど…

~~中略~~

健)その方がいいんだから。
  そういうキャラでいて欲しいって、
  みんなが言うから。*2


そう、三宅健は常にファンが喜ぶものを探し、提供しようと頑張っている。以前は可愛いと言われるのをよく思っていなかった節があったが、今は率先して「可愛いキャラ」を演じている。岡田准一自己実現の為に努力を惜しまないのとは違って、三宅健はファンの理想の為に努力する人だ。

決して岡田准一がファンをないがしろにしているわけではない。ただファンに対して誠実であろうとする姿勢が、二人は大きく違うということである。

岡田准一は両親の離婚についても隠さないし、父親像の欠如についてはよく語っていた。いわゆるアイドルとしての「反抗期」についてもその折々に口にしている。そう、取り繕うところがないのが岡田准一の素晴らしさだ。ファンが知りたいであろうことは話せる範囲で話すし、なるだけ嘘はつきたくない、という感じ。ファンの前でも生身の人間であろうとしているのだろう。その結果失望されてもそれが自分だから仕方がない、というスタンスである。

一方、三宅健は自分の生い立ちや家族のことについては決して語らない。語るのは「親が虫歯予防に熱心で厳しかった」程度の話だ。ネットで語られる彼の家庭環境がどこまで本当なのかわからないが、先に述べた「パブリックイメージ」に不適切だからと敢えて語らないとすれば、その徹底ぶりに驚く。ファンの抱くイメージに沿って、必要とあらば嘘もつくだろう。「あくまでも虚像である」と公言することで線引きしながら、「可愛くてお洒落で天真爛漫で自由奔放な健ちゃん」を演じきろうとするだろう。


三宅健は熟考し、リサーチし、努力する人だ。
理知的で、優しくて、鋭い。情況によってはファンであっても突き放す度量もある。それなのに、それなのに、

本番に弱い。

人見知りしたり、空気に呑まれたり、気後れしたりで萎縮する。一旦つまづいたらもうへこんだ気分を立て直すことができないっぽい。

表情からしてわかるのだ。ヤバイ健ちゃん心の余裕なくしてる、みたいに。よって、彼からしたら不本意だろうが、決して自由奔放でもなんでもない素の彼を私達は度々目撃することになる。紅白歌合戦のように微笑ましく笑えるものもあれば、少年倶楽部でカミセンとして登場した時のようになんだかスイッチの入らない様子にハラハラさせられたりする。 

このうまくいかない感じ。報われない感じ。目が離せない。



このブログを始めてすぐの記事に、私はSVB発売についての不満を書いた。同様の不満は他のファンブログでもあちこち見かけた。そんな反応があることに言及したのは、メンバーの中で三宅健ただ一人である。しかも、自身のラジオ番組にavexスタッフを呼び、なぜオリジナルアルバムじゃないのか、なぜあんな発売形態なのか質問するということまでやってのけた*3。勿論、販促の一貫としてやっていることで結論ありきの質疑応答である。結論ありきではあるが、少なくとも私は救われた。

『僕にはどうにも出来ないからさ、僕に出来る事は宣伝だけなんだ。
そして僕はカスタマーセンターじゃないんだ』*4

そうやって突き放されても、耳を傾けてくれるだけで充分有難いことなのだ。


私が好きなのは岡田准一だ。好きだからこそ不満もある。色々心配もある。持ち上げられてその気になっちゃったりしないか、ちゃんと叱ってくれる人はいるのか、等々。

三宅健のことは掛け値なしに尊敬しているし、少しズレたところも不器用なところも、言語センスが若干年寄りなところも全部含めて好きだ。崇拝していると言ってもいいくらい。不満などない。岡田准一のことも、必要とあらばピシッと叱ってやって欲しい。三宅健ならできる。遠慮なくビシバシ言ってやって下さい。

*1:三宅健のラヂオ、2015年2月23日

*2:同、2013年3月4日

*3:同、2015年7月20日

*4:同、2015年7月13日