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茫洋、茫洋

生田斗真の『人間失格』をレンタル。

や、ずっと気にはなってたんです。

でもあの原作って、厨二気質な人のバイブル的な匂いがあるじゃないですか。私の昔の知人だけかもしれないけど、これは俺の物語だとか言っちゃったりするじゃないですか。

取扱い注意、みたいな。ただでさえ人気小説の映像化ってファンが危なっかしいのに、この作品大丈夫なの?ファンから憎まれたりしていない?みたいな。

しかも、原作に登場しない中原中也とか、どうやって絡めんの?大丈夫なの?そんなあからさまに地雷な役を演じて、森田ヤケドしない?


でもまあ、観たんですけど。

原作『人間失格』は、太宰本人を彷彿とさせる葉蔵の一人語りつーか自伝という形になってる。

プロファイラーでも太宰の『人間失格』を取り上げたことがあって、そこでは無垢な魂が社会に潰され…みたいな扱いだったんだけど、今作も、DVDのなんていうんだろう、トップメニューのページ?あそこでfalling angel とか書いてあって、何が天使だよ。そういう美化嫌いなんだよ。

葉蔵はただの弱い人間です。感受性は豊かだけど行動力のない、周囲に流されるだけの人間。社会のお荷物。けれど、本人の語りがあるからその弱さや悩みや甘ったれ具合に同情できる訳。感情移入できる訳。

映画は、その葉蔵のモノローグはない。心情の描写がない。表情や心象風景で表せる性質のものじゃないからこれは。観ていてわからない。

結果、葉蔵は何も考えず周囲に流され、いつも暗い顔してなんとなく死にたがるヤク中、にしか見えなかった。子供時代の唐突な「生まれてすみません」は何なの?


で、森田。意外にも中原中也のキャラが立っててさー。なんかあっさり死んでたけど、いい味だしてた。不要だと思った謎キャラが、一番良かった。不思議。見た目詩人ぽくないけど、芸術家ってそういうの多いもんね。え、このゴツいやつがあんなピュアな作品を?みたいなことあるもんね。なんかいつもぬぼーっとしてる葉蔵が中也にだけ怒りをあらわにするのは意味があったのか…なかったのか…。



予告で収録されてた同じく太宰の『パンドラの匣』が面白そうだったので、そのうちレンタルしようと思ってます。こちらは原作を知らないので素直に楽しめると思う。


原作も映像化も両方素晴らしいってあんまりないよね。町田康の『けものがれ、俺らの猿と』は両方素晴らしいと思います。それくらいしか思い浮かばないなあ。