彼らと私の20余年

物心ついて初めて目にしたジャニーズはたのきんトリオだ。川崎麻世の絶頂期はもう過ぎていたが、兄姉のいる子供はそのテの情報が早いので、共に末っ子である坂本くんと長野くんはそのピークを目撃していたかもしれない。

私は坂本くんと同い年で、長野くんは一つ下だ。たのきんの登場は私達が小学生の時である。岡田准一は産まれたばかりか、もしくはまだお腹の中だっただろう。

小学生だった私達の間でもたのきんトリオは大人気だったが、私はその盛り上がりに乗れなかった。容姿普通、歌は下手、なんで人気があるんだろう。不思議で、ちょっとムカついた。嘘、かーなーりムカついた。私が好きだったのは、ジャニーズではない竹本孝之という文句なしのイケメンアイドルである。竹本孝之は、同期であるマッチに圧倒されたまま消えた*1。私はマッチを心底嫌いになった。逆怨みであるのは子供ながらにわかっていたが。

続くシブがき隊は、本木雅弘が美形なのでかろうじて受け入れることができた。でも、そのダサすぎるネーミング。それから、「授業中に手をあげて俺を好ーきだって教えたらー、抱ーいてやるぜー」とは何様のつもりか。なぜそれが格好いいと皆思えたんだろうか。基本的に、私はジャニーズのセンスがまったく理解できない。ファンのセンスもだ。

少年隊は、ある時突然メンバーが代わった。東山という知らない子が突然現れ、前からいたかのように振る舞っている。そりゃ困惑した。突然消えた彼のことは名前も顔も覚えていないけれど、今でも時々考える。彼はどんな気持ちでそれを受け入れたのかと。


ところで、私の子供だった頃、大阪では中村雅俊の「夕陽ヶ丘の総理大臣」という学園ドラマがしょっちゅう、ほんとにしょっちゅう再放送されていた。私はこのドラマが大好きで、一番好きなのは勿論主役の中村雅俊だがメインの生徒グループにいる井上純一松原秀樹も好きだった。もっとも彼らが放映当時はジャニーズ所属だったことを知ったのは随分後である。私にとって、ジャニーズアイドルは特に秀でたものもないのに称賛される、不可解で理不尽で不愉快な存在であり続けた。

それでも、テレビをつければ否応なしに目に入る。歌が聴こえる。しょっちゅう聴けば嫌でも覚える。決して好きではないのにトシちゃんの歌もマッチの歌も、今でも歌えるものが沢山ある。シブがき隊も少年隊も同様だ。

そんなこんなで高校生になった頃、あの伝説的アイドル光GENJI が現れる。GENJIメンバーの佐藤アツヒロが長野くんと同期らしいので、つまりこの時長野くんはもうジャニーズに入所している。

光GENJI も例に違わず容姿普通、歌唱力なし、それどころか諸星はかなり調子にのっている様子。キノッピーこと内海光司大沢樹生がいたので「今度は頑張れ」と応援*2したい気持ちはあったのだが、とにかく好きになりようがなかった。光GENJI は空前絶後の大人気で連日テレビにでており、多分間違いなく、私はバックで踊る坂本くん長野くんを見ている筈である。

素直に光GENJI のファンとなった妹と違って、私はウンザリと、彼らの一日も早い凋落を願っていた。まあ、その願いは割と早くかなった。絶頂期が凄すぎると、凋落の様子もあまりにも分かりやすい。


光GENJI が勢いを失う中でひっそりとSMAP 登場。尤も最初はぱっとしなかった。光GENJI が爆発的なスタートダッシュ型、諸星とその他メンバーというスタイルだったのを反面教師にしたのか、個人がまずドラマやバラエティで知名度をあげ、後からSMAPという名前を浸透させていった地道な努力の結果が今の地位である。木村も稲垣吾郎もドラマでみて好感を持ち、後日ジャニーズと知って驚いたパターンだった。前述した井上純一と同じである。

続いてTOKIOKinKi Kidsが登場する。この頃坂本くんとイノッチは割とドラマにでていた。残念ながら坂本くんのドラマはどれも見ていないが、イノッチのものは偶然見ていた。「お金がない!」で織田裕二を冷ややかにみるエリートサラリーマンは覚えている。これで井ノ原快彦という名前をしり、後日ジャニーズだと知った。「若者のすべて」「セカンドチャンス」はさほど大きな役でないのだろう、記憶にない。

そしていよいよ我らがV6デビューである。

KinKi Kids がジュニアながらドラマ主演をこなし、歌を歌い、知名度と人気を高めつつまだCD デビューしていないのと違い、唐突に現れたV6は正直なところぱっとしない面々ばかりだった。

ジュニアの人気者らしい剛健。しかし残りは???


当時、原知宏というジュニアがいた。彼は一度はV6としてデビューすると発表されたが、土壇場で降板する。雑誌にも紹介されたのになぜ?

当時噂で聞いたのは、ジャニーズの先輩からの圧力もしくは忠告によるものという話だ。

・剛健と組むならおまえも一緒にハブる。

・V6は素行不良の剛健と売れ残りシニアを「一掃処分」するための期間限定ユニットである。
一花咲かせたら用済みお払い箱なので、関わらず距離をおけ。巻き込まれるな。

以上の理由により原が自分からV6加入を辞退した、らしい。あくまでも噂です。

因みに当時私は子供相手の仕事をしていた。昼から出勤し終電で帰る日もある生活で、だから芸能情報の入手元は顧客である女子中学生か、美容室の女性雑誌だった。真偽の程が限りなく疑わしいなのは認める。

原知宏の降板は、公式にはカミセンに小柄な子を揃えてトニとの対比を際立たせたかった事務所判断であるということになっている。けれどそんな悪い噂がでること自体他のグループにはなかったし、剛健の二人の様子がいかにも「ありそう」な感じだったのだ。

つまりV6のイメージは私にとって最初はマイナスだった。ジャニタレ嫌い、といいつつでもKinki kids は好き、キムタク格好いい(当時は好きだった)、な矛盾した態度でいた私は、V6をこれっぽっちも受け入れることはできなかった。世間の「本命」は温存されているKinKi Kids であり、ドラマデビューしたばかりの幼い滝沢秀明だった。

V6など期間限定ですぐ消えるから、と受け流していたが、意外や意外、なかなか消えない。「学校へ行こう」が始まり、意外と面白い。だがしかし、私にとって個人的な大事件が発生する。

先にも書いたが私は中村雅俊のファンだった。その中村雅俊の代表作「俺達の旅」をカミセン主演でリメイクするというのだ。しかも中村雅俊の演じた役を継承するのは、悪ガキ森田だった。

中村雅俊版「俺達の旅」もやはり子供の頃から何度も再放送されていたのだが、正直なところ古臭く貧乏臭く、面白くなかった。それでも中村雅俊の人気作である。リメイクの名のもとに滅茶苦茶にされたくない。「D×D」にでていた岡田准一なら百歩譲って受け入れるが、何故森田なのか。

今なら、V6で圧倒的人気があったのが森田だからだ、と納得できる。そりゃ森田が主役だろう。だが私は納得いかなかった。

不満が燻っていたまさにその時、前代未聞の大不祥事がV6を襲う。不祥事というか、犯罪。*3

その不祥事の張本人は、謹慎脱退のいずれもしなかった。V6自体の解散すら囁かれたが、何もなかった。

後年、稲垣吾郎や草剪剛が謹慎する度に、この昔の事件が頭をよぎった。内博貴がNEWSを脱退し謹慎した時、田中聖が解雇された時もだ。遥かに深刻で悪質な事件がお咎めなしだったのに、何故この程度で謹慎なのか。解雇なのか。最近同様な事件があったらしいが、この場合も謹慎した気配がない。何もなかったように振る舞い通したジャニーズ事務所を、心底軽蔑した。代償を払ったのはファンである。15年経った今でもファンの間では内紛が続いている。

私が仕事で接していたのは小中学生で、彼女達の視界からV6はあっという間に消えた。関西のいろんな地域で仕事をしたが、彼女達が夢中なのは桜井翔であり山Pであり、タッキーだった。

枚方一中の生徒と2年ほど接したが、先輩である岡田准一の話題はでたことがない。豊中16中に「学校へ行こう!」のロケが来た*4とき、事前に行われた校内オーディションについては聞いたが、当日V6の誰が来たかは特に話題にならなかった。

夜帰りが遅いせいでテレビをほとんど見なくなったこともあり、子供達との話題作りにジュニア達の名前や顔を覚え、平成ライダーやポケモンをチェックした。V6に構っている時間はない。岡田准一はちょくちょく目にするが、他のメンバーはさっぱりご無沙汰になった。私にとって岡田准一はあくまで俳優であり、V6ではなくなった。

ジャニーズであるせいで彼は正しく評価されない。ちょっとしたことでヨイショされ、一方で「主役をやれるのは事務所の力」と貶され続ける。

事務所をかえればいいのに。とずっと思っていた。


そんな調子で月日が流れ、去年の年末、なんとなくレンタルした図書館戦争岡田准一をみて何かが引っ掛かった。

私の中で岡田准一の容姿は、「しなやかで華奢で、よくよく見れば美形」というものだった。残念キャラだったタイガー&ドラゴンの印象が強かったのかもしれない。図書館戦争岡田准一は役柄もあるが格好良かった。格好良かったが、ゴツすぎた。私の知ってる岡田准一ではない。

私の好きな岡田准一は、READYコンの頃のである。タイドラや冬の運動会のあの頃は細すぎで、最近のエベレスト帰りの体は泣きたいくらいでかかった。しかも、髭。

ゴツくなった俳優岡田准一に違和感を拭えず、なんとなくV6の岡田准一に興味が湧いた。「お と な  り」のエンディングで岡田准一が恋人である麻生久美子とじゃれながら歌を歌うのだが、本職でもあるV6ではどんな歌声なのだろうと気になったのだ。紅白歌合戦は見損ねたが、スカリミをレンタルして、そして岡田准一ではなく坂本くんの歌声に堕ちた。

V6はいかにもジャニーズらしく歌は下手だった筈だ。それが何この美声。この歌唱力。他の五人だって決して下手な訳ではない。これが今のV6か…!!

そこからファンブログを読み漁り、CDを片っ端からレンタルしまくり、中古屋で見つければ迷わず買った。そしてコンDVDにまで手を出してしまい、毎日毎日見るようになった。

歌い踊る6人は素敵である。そう、V6の魅力はわちゃわちゃだという人も多いが、私にとってはなによりダンスだ。歌声だ。だから岡田准一に痩せてほしい、筋肉を落として欲しいと思うのは見た目の問題ではなく、ダンスに支障をきたすからである。テレビの歌番組でみる岡田准一は、時おりフォーメーション移動がドテドテしている。背を丸めて左右に揺れるから余計にだ。ドシドシ、のそのそ、ポテポテ、という擬音がつきそうな小走りは美しくない。ある日唐突に背骨云々重心云々と言い出したのは多分、そこら辺を指摘されたのではないかと思っている。

ダンスに邪魔な筋肉は脱げ。V6としての活動より役作りを優先するな。

そう、ほんの半年前の自分とは正反対の、まさかのV6の岡田准一>>>俳優の岡田准一である。昔の自分がみたらびっくりするだろう。

そう、昔の自分に言いたい、何一つ秀でたところが見当たらなくても、20年後のV6は素晴らしくなってるよ、と。あの頃解散しなくて良かったと心から思う日があるよ。と。そして、毛嫌いしている三宅健をいつか心から尊敬するようになるんだよ。と。

私はもしかしたら近い内に岡田准一ファンではなく健担を名乗るかもしれない。三宅健という人についてはそのうち、じっくり書いてみたいと思っている。

*1:後年、『中学生日記』の先生役をしていたそうだ。今は知らない

*2:最初のグループが上手くいかなかったので

*3:許されるならいつかV担達が未だにその件に振り回されている様子に触れてみたい

*4:屋上から叫ぶアレ